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英雄のセカンドキャリアは『敗戦国の救世主』!? 叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士 ネタバレなし感想

悪しき魔王を倒し、世界の平和をもたらした勇者のその後を描いた物語というのは1つのパターンとして存在する。

「まおゆう」なんかが代表的だが、魔王を倒しただけでは世界は平和にならないし、何なら魔王を倒すほどの実力を持った勇者が平和な生活を遅れるはずがない!

杉原智則によるこの「叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士」もそんな物語の1つであるが、この物語の戦後の英雄が挑むのは『敗戦国の救済』だ。

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あらすじ

邪神カダッシュをこの世に降臨させ、全土統一をもくろんだランドール王国。しかしその野望は達成寸前で六人の英雄によって阻まれた。戦後、現状を探るべくランドールに赴いた英雄の一人“竜戦士”ギュネイ。そこで彼が目にしたのは、戦勝国による容赦ない略奪、狼藉によって荒廃する国土と苦しむ民衆の姿だった。見かねて手助けしたギュネイは、うっかり救世主として名を馳せてしまう。意外としたたかなランドールの姫や、かつて刃を交えた仇敵と正体を隠しながら共闘するのも一苦労、そして対する敵は以前は肩を並べて戦った戦友で?英雄による邪神王国復興物語、開幕!

 

 

要は、第2次世界大戦のドイツぐらいの悪逆非道を尽くしたランドール王国が敗戦国になった結果、戦勝国から土地を取られるわ、女はさらわれ男は殺されるわの酷い仕打ちを受けていた中を主人公であるギュネイが圧倒的な武力を持って助ける。という話ではあるのだが、これが爽快な英雄譚ではなく杉原智則らしい上手くいったりいかなかったりの地に足ついたーだからこそ心に刺さるーお話になっている。

主人公はそれこそ作中最強クラスの武人ではあるのだが「〇〇を倒せ!」というシンプルな構図ではない。敗戦国ランドールを倒すために結成された連合国の首脳達・荒れた土地に勝手に居つく山賊・邪教徒達の粛清といって略奪を働く近隣の貴族達・再び邪神の降臨を目指す急戦派。

大小様々な強さ・立場の敵がギュネイを悩ませる。

ギュネイの出自はただの村人ということもあって政治的な駆け引きを1人で考えることはできない。しかも、自らの本当の姿である<竜騎士>の姿を晒せばランドール国民の反感を買ってしまう。

静かに毎日、田を耕す・商いを行う。そうやって人々が平穏に暮らす環境を作ることが「ただ強い」だけでは叶わないという事実を嫌になる程ギュネイに見せつけてくるのは読んでるこちらまで苦しくなってしまう。

大局を見ればランドールを離れて<竜騎士>として各国のトップに呼びかけるのが正解であるのはわかる。でも、目の前の人々を見捨てることはできない。主人公ギュネイのそんな善性が1つの結実をみせる2巻のラストは最高だった。

 

杉原智則の描く「持つ者の苦悩」が最高に炸裂した2冊なので7月の3巻発売に向けてぜひ!