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FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 感想 正しく世界を見るのは難しい

たまには意識高く振る舞おうとベストセラーになっていた「FACTFULNESS(ファクトフルネス) 」を読んでみたが、素直に面白い本だった。

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内容としては世界に関する基本的な事柄(現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょうか?)などの質問をアメリカやフランスなどのいわゆる先進国の人々に回答してもらったときにどの国でも正答率がランダムに答えた場合以下なのはなぜか?と言う疑問を入り口に本能がいかに人間がデータを解釈するのに邪魔をしているか、どのようなことに注意しなければいけないかを著者の実体験を交えながら解説してくれている。

 

回答としては世界は全体的には少しずつ良くなっていると言うことで、これらの話は資本家やエリート銀行員に投資先として発展途上国的なところを選ぶのを促すためにやっているという。

普通の人間にはあまり世界の趨勢は関係ないが、データを見るときの心構えや注意点は実用的にも役に立つだろう。

そして、著者の実体験が何より面白い。

 

医者であり公衆衛生学の学者でもある著者はアフリカなどの地域に実際に赴き、調査や公衆衛生の改善を行っていたのだがそこから繰り出される豊富な実体験が大変面白い。

特に好きなのは白い丸々とした幼虫を出されたときに食べたくはないが、その村では歓迎の御馳走として出されているので単純に断るのは失礼に値してしまう。という中で「スウェーデン人は虫を食べないんですよ」と人種的な理由を盾に断ったと言うエピソードだ。

これは「ひとつの例が全てに当てはまる」という思い込みを人間はしやすいことの例として出された話なのだが、著者自身がそれを悪用した例を出すというのがとてもいい。

 

この本では繰り返し「本能」「無意識」という言葉が出てくる。これは世界を正しく見れないのは人間の本能・無意識が邪魔をするからだというのが基本的な語り口だからだ。

ここが著者の実に巧いところで決して「あなたがバカだから」「世間知らずだから」といったようなことは書いていない。それどころか有名銀行員やジャーナリストですら間違っていると書いている。

知らなかった、間違っていたことを絶対に責めないようにそして、ビジネスにおいても世界のあり方を知ることは得になるという主張を崩さない。

読んでいてもバカにされるような気分にならないようにすごく配慮してあるのを感じた。

 

また、この本の中で特に面白かったのは以下の部分だ

「わたしは「世界は良くなっている」とは言っているが、「世界について心配する必要はない」と言ってはいない。もちろん、「世界の大問題に、目を向ける必要はない」と言っているわけでもない。「悪い」と「良くなっている」は両立する。」

 

言われてみると当たり前だが、何かしらの状況を「悪いが、良くなってきている」と評価することって難しいと感じる。

近い言葉としては「マシになった」だが、これだと良くなってきていることを喜ぶニュアンスがないので「悪いが、良くなってきている」とはちょっと違う気がする。

感覚で語ってしまうと「良い」「悪い」の二分法になってしまうのでデータを良く見てでないと「悪いが、良くなってきている」という言葉は出てこないだろう。

 

大変寂しいことに著者は既になくなってしまっていることが本の最後で語られる。

このコロナで揺れる世界を著者ならどんなふうに叱咤激励していたのか、是非とも見てみたかった。

 

データに基づいて状況を理解して動く。

言葉にすれば簡単だけど、とても難しいからこそ10の思い込みを時々思い返していきたい。