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映画「若おかみは小学生」 感想

笑って泣ける、エンターテイメントとして完璧な映画でした。

何となくあらすじとして「両親を事故で亡くした主人公が祖母の家業である旅館に身を寄せて、若おかみとして成長していく」ぐらいの前知識だったが、いい意味で裏切られた。

まず、予想外だったのは女将である祖母が非常に優しい人であったと言う点だ。

こういう作品だと「意地悪な祖母が実は良い人でした」みたいなパターンをやりがちなのだけど、最初から最後まで厳しい部分はあるけれども温かさと優しさを併せ持った人格者として描かれていてとても良かった。

もう一つ素晴らしかった予想外な展開はコメディシーンが豊富にあった点だ。

あらすじからお涙頂戴の重たい作品になるかと思いきや、アニメっぽいオーバーなリアクションで笑いを誘うシーンが沢山あった。

自分が見た回は休日の午前中ということもあってメインの客層である、女児先輩とその親御さんが沢山いたのだがコメディシーンでは女児先輩たちの笑い声が劇場に響き渡っているぐらい素直に面白かった。

 

では、ただただ楽しいだけの作品かというとそんな事はなくて「両親の死」という重たいテーマがずっしりと響いてくる。

おっこは両親の死を機に祖母の「春の屋」旅館に身を置くわけだが、その時も丁寧に挨拶をして元気に振る舞う。若おかみとして仕事をこなすときも、友人と一緒に下校するときも陰鬱な様を見せる事はない。しかし、毎晩両親のことを夢の中で思い返す。まるでそこにいるかのように。

仕事に夢中になっているときは両親のことを忘れられるけど、一人でとこに着いた瞬間に現実に引き戻されてしまうというのは説得力があるし、彼女が若おかみとしての仕事を頑張る理由づけにもなっていてダイレクトに伝わってくる描写だった。

 

今回の映画では、大きく3組のお客との交流が描かれるわけだが、名前と容姿がともにインパクト抜群のグローリー・水領はオタク的には語らずにはいられない。

女の子の憧れるカッコイイ大人の女性で、オープンカーを乗り回す占い師と属性てんこ盛りのキャラだが大人としてではなく、おっこの友人としての立ち位置で登場していたのが面白かった。

おっこが対向車のトラックを見てフラッシュバックするシーンがとんでもなく重たいのだが、そのあとのファッションショーで音楽とともに盛り上がるシーンなんてこれなんの映画だ!?と思うくらいコスプレ的な衣裳が出てきて可愛いし、面白いしで本当に最高だった。

 

人外3人組のウリ坊、美陽、鈴鬼も非常に良かった。

ウリ坊に関しては峰子とのエピソードの時点でちょっと泣いてしまったし、鈴鬼は何よりも食欲優先な食いしん坊というキャラと冷静にウリ坊と美陽に別れを進言するような一歩引いた立場もこなしたのが印象的だった。

美陽はラストの真月の涙を拭おうとする仕草が忘れられない。

美陽が成仏を決意したのはおっこの独り立ちという側面だけでなく、真月におっこという友人ができて安心したからなのだろうと思う。

真月は学校では陰で「ピンふり」と呼ばれ孤立していた。そんなわけだから当然、友人と呼べるような人もいなくて旅館の大人たちと話し合うことの方が多かったのだろう。そんな妹をずっと見ていた美陽にとって真月に良くも悪くも正面からぶつかってくれるおっこという存在は有り難かったのだろうと思う。

 

ラストの山寺宏一が父親を務める木瀬一家はここまでやるか!と思うくらいの怒涛の追い込みでビックリするしかなかった。

この作品は喪失感を抱えた人が沢山出て来る。最初のお客であった神田親子は母を亡くし、グローリーさんは恋人に振られた。真月は姉を亡くしているし、祖母は娘夫婦を、おっこは両親を亡くしている。

そんな中で木瀬一家は幸いなことに身体がボロボロになりつつも誰も欠けることなく春の屋にたどり着くことが出来た。しかし、それはおっこの両親が犠牲となった上で築かれたものとも捉えられる。

でも、おっこは木瀬一家を祝福した。

それは等身大のおっことしてだけではなく、若おかみとしてのおっこがそうさせたのだと思う。

辛いことがあればその傷を癒し、嬉しいことがあれば祝福する。

人としては当たり前で、でも難しいことをおっこが決断出来たのは旅館でお客様のことを第一に考える姿勢を貫き続けたからだろう。

 

 

作画に関しても全編丁寧で動きとしても、所々にジブリを彷彿とさせる場面があったが何よりもおっこが可愛く描かれたいたのが素晴らしかった。

 

テレ東は1年に1回は夏休みに映画版とテレビ版を流すようにして、国民的アニメを狙ってください!

 

本当に楽しい94分間でした!